来談者中心療法<カール・ロジャーズ>
概要
ロジャーズ理論で想定されている人間観は、「人間にはそもそもよくなるチカラが内在している」のであって、人間は本来「自己実現の傾向」があるということ。
ロジャーズは人間の行動を決めるのは「自分が自分のことをどう評価しているか」すなわち「自己概念(自己イメージ)」であると考える。自己概念は他者評価も取り入れながら後天的に形成される。一度形成された自己概念を変えることは不安、恐怖心からなかなか難しいため、カウンセリングが大切となる。
来談者中心療法(非指示的療法)
来談者中心療法(非指示的療法)とは、「自己理論」に基づく面接法のこと。自己理論による面接とは、自己概念と実際の体験とがズレている状態=自己不一致の状態から、自己一致に近づける面接法のことである。
【左図】<自己概念>自分は暗くてモテない人間である <体験>性格が明るくかわいい彼女から告白された
⇒大きなズレが発生しているので、CLは「お金目当てで近づいてきた」と事実を歪曲する。
【右図】<自己概念を修正>自分は根暗ではなく控えめな人間である <体験>性格が明るくかわいい彼女から告白された
⇒カウンセリングで「控えめな性格の自分」を好きになってくれたと考えることができた。自己概念を修正して体験と一致。あるがままの自分を受入れて心理的に安定(適応)した状態
ロジャーズは晩年、人間研究センターを設立してエンカウンターグループ<非構成的エンカウンター>(グループで自己成長や人間関係の改善を目指す)に取り組みさらに手法を確立させていった。発展した来談者中心療法は、「パーソン・センタード・アプローチ(PCA:人間中心的アプローチ)」と称されている。後に日本で國分康孝が<構成的エンカウンター>を開発。
来談者中心療法の重要な3条件
ロジャーズの来談者中心療法は、現在でもカウンセラーの基本的姿勢として重要視されている。有名なのは下記3条件。
(1) カウンセラーの自己一致(純粋性、透明性)
カウンセラー自身も自己一致していることが大切であり、自己の中に流れる感情や思考を純粋に受け止め、自分の体験をありのままに受け止めることができている状態。防御的にならずオープンマインドの姿勢。
(2) 無条件の肯定的配慮
まずはCLの話を一旦はすべて受け止めること。考え方や価値観は全員が違うことが大前提。自分の価値観を押し付けてはいけない。
(3) 共感的理解
CLの内面的世界をゆったり感じ、その時々のCLの感情を注意深く感じ取って理解する。単なる感情反映ではなく真の思いやりを持った感情反映であること。
「共感」と「同感」は違う。同感は相手の考えに同意、賛成することなので、自分の価値観が入ってしまう。共感は、自分がそう思っていなくても「そうなんですね」と受け止めることなので、賛成とか反対とか自分の価値観は反映されない。