【キャリコン学科試験】シャイン:過去問徹底解剖から見えてきた頻出論点!
過去問を徹底的に分析して、頻出理論家の重要論点をまとめて紹介しています。今回は、頻出理論家である『シャイン(Schein, E.H. H.)』を取り上げます。シャインは、発達的視点と組織心理学をベースとした組織研究において、個人と組織の相互作用と個人のキャリア発達に注目し、独自の分野を確立してきました。発達的視点、臨床的視点をもった、組織心理学者シャインが提唱した理論上の主要概念は、①3つのサイクルとその段階、②キャリア・サイクル、③キャリア・アンカー、④キャリア・サバイバルです。シャインの理論のキーワードである「内的キャリア」、「外的キャリア」、「3次元モデル(キャリア・コーン)」、「キャリア・アンカー」、「キャリア・サバイバル」は各々と結びついているので、順序立てて理解していきましょう。
記事作成者の私は、第15回キャリアコンサルタント試験を高得点で(学科84点、実技125点/内訳:論述44点、面接81点)一発合格しました。現在は(株)TADAJUKUのWebマーケティング部としての活動も行っています。
3つのサイクル「生物学的・社会的」、「家族関係」、「仕事・キャリア」
過去問では、3つのサイクルの名称が問われることがほとんどでした。まずは、3つのサイクルの名称は必ず覚えましょう。今度、どのように出題傾向が変わるのかは分からないので、時間的に余裕があれば、3つのサイクルの内容も覚えましょう。
- シャインは、人が生きている領域(役割が存在するという意味での領域)を大きく3つのサイクルに分け、それぞれのサイクルに段階を設けた。シャインが提示した「生物学的・社会的」、「家族関係」、「仕事・キャリア」の3つのサイクルが相互に影響し合って、人が存在していることを記したものである。
- キャリアの問題を考えるうえでは、すべてのサイクルを考慮する必要がある。
- 仕事・キャリアサイクルの段階と課題は、生物学的・社会的サイクルの段階と課題に密接に関連し合う。
内的キャリア・外的キャリア
シャインは、『キャリアを「外的キャリア」「内的キャリア」という2つの軸で捉える』ことは頻出論点です。しっかり覚えておきましょうね。なお、「外的キャリア」は、次項で取り上げる3次元モデル(キャリア・コーン)のことです。
- キャリアをとらえる「外的キャリア」「内的キャリア」という2つの軸を提唱した。
- 内的キャリアとは、個人がキャリアにおいて主観的に遭遇し、経験する段階と課題である。
- 外的キャリアとは、機能(職能)、地位(階層)、中心性の3次元からなる。
- 外的キャリアとは、その人が経験した仕事の内容や実績、組織内での地位などを意味し、内的キャリアとは、職業生活における歩みや動きに対する自分なりの意味付けである。シャインの組織内キャリアの発達理論では内的キャリアは、外的キャリアの基礎となるものとして捉える。内的キャリアに注目することは、個人にとっては生きがいや働きがいといった自分のモチベーションの源泉を知ることであり、自分らしいキャリアを実現するための手がかりを得ることでもある。
3次元モデル(キャリア・コーン)
3次元モデル(キャリア・コーン)では、階層次元の名称と、どのような動きをするのかをしっかり覚えましょう。
- シャインは、組織内キャリアとは組織内の移動にほかならないとし、機能(職能)、地位(階層)、中心性の3次元モデルで設明している。
- 第1の次元は「機能(職能)」軸で、この軸に沿った移動は製造→販売→マーケティングというように組織の部門間の機能的境界を移動するプロセスである。企業内の配転、異動などがこれに当たる。
- 第2の次元は「地位(階層)」の軸で、見習社員→1級職→2級職→係長という変化で、縦の昇進などがこれに当たる。
- 第3の次元は「中心性(部内者化)」の軸に沿った移動である。これは同一部署、同一地位内で仕事の中身が組織にとってより重要で中心的なものへ移動していく過程である。すなわち、地位、機能が同じでも、自己の重要性が中心化する傾向である。すなわち、3つの次元は必ずしも独立してはおらず、相互に関連している。
- 3つの次元は必ずしも独立してはおらず、相互に関連している。
キャリア・サイクルの段階と課題(直面する一般問題、特定の課題)
キャリア・サイクルの段階と課題については、木村周先生の著書『キャリアコンサルティング理論と実際』に見開き1ページで掲載されています。ボリュームがあるので、過去問の論点のみを集中的に覚えるようにしましょう。
- 「成長・空想・探究、仕事の世界へのエントリー、基本訓練、キャリア初期、キャリア中期、キャリア中期の危機、キャリア後期、衰え及び離脱、引退」これらの段階は、シャインのキャリア・サイクル(組織内キャリア発達理論)における各段階である。
- キャリア・サイクルの「基本訓練(16~25歳)」の段階に直面する一般問題として、「仕事及びメンバーシップの現実を知って受けるショックに対処する」が挙げられている。
- 「技術的に有能であり続けるか、あるいは経験に基づく知恵を用いるようになるか」は、非指導者役にあるキャリア後期(40歳~引退まで)の課題である。
- 「仕事が主ではない生活を送れるようになる」ことは、衰え及び離脱(40歳から引退まで)段階の一般問題である。
- 「中年の危機及び家庭の空の巣問題にどう対処するか」は、非指導者役にあるキャリア後期(40歳~引退まで)の特定の課題である。
- キャリア中期の危機(35~45歳)は、自分のキャリアの再評価を行い、現状維持か、キャリアを変えるかを決めることが一般問題とする。
- 「自分自身の意思決定に自信を持つようにする」は、キャリア中期の特定の課題である。
- 「配偶者とより親密に暮らす方法を学ぶ」ことは、衰え及び離脱の時期の特定の課題である。
キャリア・アンカー
キャリア・アンカーについては学者によって若干ですが、表現方法が異なります。しかし、過去問の論点に挙げている文章をしっかりと覚えることで得点源になります。なお、キャリア・アンカーの8つのカテゴリー名は必ず暗記しましょうね。時間的に余裕があれば、8つのカテゴリーの内容も覚えましょう。
- キャリア・アンカーは、教育や実際の仕事経験の積み重ねに基づいて形作られ、今現在のキャリアや人生における判断基準となるとともに、制約にもなると述べている。
- キャリア・アンカーは、個人の生涯にわたって、職業上の重要な意思決定に影響を与え続けると考えられている。
- 自身が持つキャリア・アンカーを知ることが、キャリアにおける個人ニーズを明確にし、キャリアの方向性を明らかにする上で有効である。
- 就業経験があるものの多くは、就業経験を通してキャリア・アンカーを持つ。
- キャリア・アンカーは個人にとって、キャリア選択に直面して初めて見えてくるものであり、キャリア発達はこうした要素をベースにした「自己概念にキャリアを統合するひとつのプロセス」であるとシャインは述べている。
- キャリア、職業における自己概念/セルフ・イメージとは、具体的には例えば、自分が職務遂行に当たって、「~が得意である」「~によって動機づけられる」「仕事を進める上で何に価値を置いているか」、についての自分自身の認識のことである。
- シャインは、「人が何らかの職業上の選択を迫られた時、最も手放したくない欲求、価値観、能力(才能)などをあらわすもの」で、職業生活において拠り所となるものとして、キャリア・アンカーを示した。
- 欲求と動因の基本的な組み合わせは、効果的なキャリア・アンカーとしての役割を果たす。それはキャリアの選択に影響を与えるだけでなく、転職にも影響を与え、その個人が人生で見つけたいと思っているものを形づくり、未来の展望、関連する目標と対象の総合的な評価を特徴づけるとした。
- シャインは、個人の独自なキャリアには、いくつかにパターン化されたキャリア(職業)における自己概念(セルフイメージ)があり、それを「キャリア・アンカー」と名づけた。
- キャリア・アンカーとは、コンピテンシー、モチベーション、バリューからなる自己概念である。人間はさまざまな抱負やモチベーションから、おそらく無意識のうちに心の底に1つのアンカーを形成し、それをなかなか放棄しようとしない。
- キャリア・アンカーは、「特定専門分野/機能別コンピテンス」、「全般管理コンピテンス」、「自立/独立(自由)」、「保障/安定」、「起業家的創造性」、「純粋な挑戦」、「奉仕/社会献身」、「生活様式」の8種類である。
- 起業家的創造性は、新規に自らのアイデアで起業・創業することを望む。現在起業していなくても、常に起業することを意識していることも含まれる。
- 全般管理コンピテンスは、総合的な管理職位を目指す。組織全体にわたる様々な経験を求める。
- 純粋な挑戦は、チャレンジングなこと、誰もしたことがないことに取り組むことを求める。一つの挑戦が達成したら、さらに新たな挑戦を追い求め、「挑戦すること」「挑戦し続けること」自体に価値を置く。
- 生活様式は、仕事生活とその他の生活との調和/バランスを保つことを重要視する。なお、このアンカーは最近増加の傾向にある。
- 特定専門分野/機能別のコンピテンスは、特定の業界・職種・分野にこだわる。専門性の追求を目指すが、いわゆる技術系に限らず、ずっと経理畑を歩む人も含まれる。
- 自律/独立(自由)は、制限や規則に縛られず、自律的に職務が進められることを重要とする。内的な感覚として、自分の仕事のやり方を自由に自分自身が決めることを望む(自分自身が自由に仕事を進められているという認識があればよい)。
キャリア・サバイバル
シャインのいうマッチングは静的なマッチングではなく、個人のキャリアが決まるダイナミクスを明らかにしようとする試みです。組織と人との相互作用を重視し、組織も成長し、個人も成人を過ぎても、成長し続ける存在であるという発達的視点に根ざしたものです。
- シャインは、「キャリアサバイバル-組織と役割の戦略的プランニング」の中で、個人ニーズと組織ニーズをマッチングさせることが重要であると述べている。
- 『キャリアサバイバル-組織と役割の戦略的プランニング』を著し、キャリア・アンカーが個人ニーズの明確化であるのに対し、『キャリア・サバイバル』では、むしろ環境からのニーズ、すなわち組織ニーズの分析の必要を強調している。そして個人のキャリアが順調に開発され発展するためには、個人ニーズと組織ニーズが互いにマッチしていることの重要性を述べている。
- 与えられた(与えられうる)仕事とマッチングするか否かを決定するために、職務・役割側の要件を明らかにする必要がある。これが職務・役割分析と職務・役割プランニングである。これを現実に実現していくことをシャインは「キャリア・サバイバル」という概念で示している。
- 静的なマッチングではなく、個人のキャリアが決まるダイナミクス力学を明らかにしようとしており、組織と人の相互作用を重視し、個人は成人を過ぎても成長し続ける存在であるという発達的視点に根差している。
まとめ
今回は「シャイン」について、解説しました。
シャインの最頻出論点は、『キャリア・アンカー』です。学者によって表現方法が異なりますが、『過去問の論点!』を参考にして必ず覚えておきましょう!
— 参考書籍 —
- 新時代のキャリアコンサルティング(労働政策研究研修機構 (編集)、労働政策研究・研修機構= (編集))
- 職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査
- キャリアコンサルティング理論と実際[第5版]木村 周(著)
- 新版キャリアの心理学[第2版]渡辺 三枝子 (編著)
- キャリアカウンセリング 宮城 まり子 (著)
- 働くひとの心理学 岡田昌毅(著)
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